実力も運のうち-評価4

作成日:2022.1.25(火)、変更日:2022.1.26(水)


基本情報

以下の本(日本語版)を読みました。

読んだ後の感想

星5つ中の4

さすがにハーバードの人気講座を開講している著者、議論する問題が興味深い。政治、倫理、哲学について考えさせられる一冊。しかし時間がないので目次、序文と第1章しか読んでいない。また今度ゆっくり読みたい。

ポイント

  • Cover: ハーバード大学の学生の三分の二は、所得規模で上位五分の一に当たる家庭の出身だ。にも関わらず、彼らは判で押したよう、自分が入学できたのは努力と勤勉のおかげだという。
    • 判で押したよう:まったく同じことの繰り返しで、少しの変化もないこと。また、きまりきっていることをいう。はんこうで押したよう。はんこで押したよう。1

  • Cover: 「能力主義(メリトクラシー)」がエリートを傲慢にし、「敗者」との間に未曾有の分断をもたらしている。
    • メリトクラシー (meritocracy) とは、メリット(merit、「業績、功績」)とクラシー(cracy、ギリシャ語で「支配、統治」を意味するクラトスより)を組み合わせた造語。2

  • P12 コロナでラテン系住民の死亡率は、白人より23%高かった。黒人のアメリカ人の死亡率は、白人のアメリカ人よりも40%高かった。

  • P13 2020年にジョー・バイデンが民主党の大統領候補に指名されたとき、彼は36年ぶりにアイビーリーグ(Ivy League)の大学の学位を持たない民衆党大統領候補になった。この事実は、バイデンがブルーカラーの労働者と信頼関係を築く助けになるかもしれない。

  • P15 政治的・文化的エリートに対するトランプの敵意が、地方や労働者階級たちの憤懣、彼らの屈辱感に訴えたのだ。トランプの政策が彼らの助けとなることはほとんどなかったにもかかわらず、彼らはトランプを自分たちの味方だと感じた。

  • P14-15 現代政治における学歴偏重(へんちょう)主義、市場主導の能力主義的倫理が、いかにして怒りに油を注ぎ、反動を促したかを理解する必要がある。

  • P22 Ivy Leagueの学生の三分の二あまりが、所得規模で上位20%の家庭の出身。プリンストン大学とイェール大学では、上位1%出身の学生が下位60%出身の学生より多い。入学機会に不平等がある原因:1)レガシーアドミッション(卒業生の子供の優先入学);2)寄付者への感謝(裏口から入学);3)裕福な家庭出身の子供が正門から入ることを後押ししてくれる有利な立場にある。

  • P239 カレッジボード(college board)は、非営利団体カーン・アカデミーと提携して、無料のSAT模擬試験を提供。

amazon.co.jpでの評価

カスタマーレビュー

星5つ中の4.2、768個の評価

米国における功績主義(能力主義)の歪みを学ぶ by LFB

2021年4月14日に日本でレビュー済み

良書で日本語版を手に取れたことをありがたく思います。小さな点ではありますが、サンデル教授は、結語において、『どれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない。』

内容紹介

100万部突破『これからの「正義」の話をしよう』から11年

格差と分断の根源に斬りこむ、ハーバード大学哲学教授の新たなる主著

〈ブルームバーグ、ガーディアン紙ほか年間ベストブック〉

ハーバード大学の学生の三分の二は、所得規模で上位五分の一にあたる家庭の出身だ。 にもかかわらず、彼らは判で押したように、自分が入学できたのは努力と勤勉のおかげだと言う――

人種や性別、出自によらず能力の高い者が成功を手にできる「平等」な世界を、私たちは理想としてきた。 しかしいま、こうした「能力主義(メリトクラシー)」がエリートを傲慢にし、「敗者」との間に未曾有の分断をもたらしている。 この新たな階級社会を、真に正義にかなう共同体へと変えることはできるのか。

超人気哲学教授が、現代最大の難問に挑む。

解説/本田由紀(東京大学大学院教育学研究科教授)

著者について

マイケル・サンデル(Michael J. Sandel)

1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。

ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。

2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者として知られる。

類まれなる講義の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目 Justice (正義)は延べ14,000人を超す履修者数を記録。あまりの人気ぶりに、同大は建学以来初めて講義を一般公開することを決定。日本ではNHK教育テレビ(現Eテレ)で『ハーバード白熱教室』(全12回)として放送されている。

著書『これからの「正義」の話をしよう』は世界各国で大ベストセラーとなり、日本でも累計100万部を突破した。ほかに『それをお金で買いますか』『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(以上早川書房刊)などの著作がある。2018年10月、スペインの皇太子が主宰するアストゥリアス皇太子賞の社会科学部門を受賞した。

amazon.comでの評価

カスタマーレビュー

4.5 out of 5, 1604 ratings

内容紹介

  • A Times Literary Supplement’s Book of the Year 2020

  • A New Statesman's Best Book of 2020

  • A Bloomberg's Best Book of 2020

  • A Guardian Best Book About Ideas of 2020

The world-renowned philosopher and author of the bestselling Justice explores the central question of our time: What has become of the common good?

These are dangerous times for democracy. We live in an age of winners and losers, where the odds are stacked in favor of the already fortunate. Stalled social mobility and entrenched inequality give the lie to the American credo that "you can make it if you try". The consequence is a brew of anger and frustration that has fueled populist protest and extreme polarization, and led to deep distrust of both government and our fellow citizens--leaving us morally unprepared to face the profound challenges of our time.

World-renowned philosopher Michael J. Sandel argues that to overcome the crises that are upending our world, we must rethink the attitudes toward success and failure that have accompanied globalization and rising inequality. Sandel shows the hubris a meritocracy generates among the winners and the harsh judgement it imposes on those left behind, and traces the dire consequences across a wide swath of American life. He offers an alternative way of thinking about success--more attentive to the role of luck in human affairs, more conducive to an ethic of humility and solidarity, and more affirming of the dignity of work. The Tyranny of Merit points us toward a hopeful vision of a new politics of the common good.

著者について

Michael J. Sandel teaches political philosophy at Harvard University. His books What Money Can’t Buy: The Moral Limits of Markets and Justice: What’s the Right Thing to Do? were international best sellers and have been translated into 27 languages. Sandel’s legendary course “Justice” was the first Harvard course to be made freely available online and has been viewed by tens of millions. His BBC series “The Public Philosopher” explores the philosophical ideas lying behind the headlines with participants from around the world.

関連情報

参考資料

1

コトバンク:判で押したように

2

[Wiki] メリトクラシー